研究会の目的
研究費申請時に記載した研究目的から抜粋・加筆した内容を記載しておきます。今後、加筆する予定です。 (2015年4月4日)
企業間の競争を促進する適切な経済環境の整備は重要な問題であり、それを支える競争法や競争政策に関連する議論は重要である。この分野は法学と経済学の境界領域だが、日本において、経済法学者による研究は進んでいるが、経済理論に基づいた現状分析や厚生分析などは不足している。そこで本研究課題では、産業組織論の理論分析を行う研究者を集めて、競争法関係の経済理論分析を行う。その中でも垂直取引関係の理論分析に重点をおく。理由は、垂直的取引制限の理論分析では、企業による垂直取引制限の帰結は明快ではなく、想定する状況に応じて取引制限の効果が変化するので (Buehler, 2012 Section 5)、垂直取引制限に関する理論上の可能性を様々な角度から検討することが必要となるからである。実際、垂直取引制限は、ハードコアカルテルのように当然違法(per se illegal)として一律に対処することは難しく、事例ごとの判断になる。例えば、
米国におけるリージン事件で、垂直取引制限の1つである再販価格維持行為が従来の当然違法(per se illegal)ではなく合理の原則(rule of reason)とされたのは、産業組織理論において再販価格維持行為の利点が多く示されたことは一因としてある。よって、理論研究の蓄積を通じて、各垂直取引制限の特性を分析することが必要とされる。